「お金持ち養成大学」へようこそ。
あなたが保有している銘柄が、過去最高益を更新する「素晴らしい決算」を発表しました。
「やった!明日はストップ高だ!」と胸を躍らせて翌朝を迎えると…なんと、株価は暴落。
「なぜだ!? 業績は完璧なのに、おかしいじゃないか!」
そう叫びたくなる気持ちは分かります。しかし、市場は決して間違っていません。 間違っていたのは、「良い決算が出れば、株価は上がるはずだ」という、あなたの【思い込み】の方なのです。
この記事は、投資家を絶望させる「材料出尽くし(Sell the Fact)」という現象の正体を暴き、理不尽な値動きに振り回されないための、投資家心理の講義です。
第1章:株価は「実績」ではなく「期待」との答え合わせ
まず大前提として知っておくべき残酷なルールがあります。
『株価は、発表された【実績】の良し悪しでは動かない。事前の【期待】を上回ったか、下回ったかで動く』
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会社予想:利益100億円
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市場の期待(コンセンサス):利益120億円
この状況で、決算結果が「利益110億円」だったとします。
会社予想より10億円も多い「好決算」です。しかし、市場の期待(120億円)には届きませんでした。
投資家は「なんだ、思ったより伸びなかったな」と失望し、株を売ります。これが【失望売り】です。 今の株価は、すでに「120億円の利益」を織り込んで(先取りして)上がっていたため、110億円という事実は、実質的な「下方修正」と同じ扱いになるのです。
第2章:「噂で買って事実で売る」のメカニズム
そしてもう一つ、さらに厄介なのが【材料出尽くし】です。 これは、決算が市場の期待通り、あるいは期待以上だったとしても起こります。
投資家心理のサイクルを見てみましょう。
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決算前(噂):「今度の決算は凄そうだぞ」と噂になり、期待で株価がどんどん上がる。(噂で買う)
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決算発表(事実):「予想通り、凄い決算が出た!」
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直後(事実で売る):「よし、予想が当たった。これ以上の好材料は当分出ないから、利益を確定しよう」
プロの投資家は、決算が良いことなど百も承知で、発表前に仕込んでいます。
そして、発表を見て飛びついてきた「イナゴ(初心者)」に株を売りつけ、利益を確定して去っていくのです。
好決算は、彼らにとっての【ゴール】であり、初心者にとっての【スタート】になってしまっている。このタイムラグが、悲劇を生むのです。
第3章:暴落を回避する唯一の方法「コンセンサスを確認せよ」
では、どうすればこの罠を回避できるのでしょうか? 答えはシンプルです。決算発表を見る前に、必ず【コンセンサス予想(市場の平均予想)】を確認することです。
証券会社のアプリや情報サイトで「アナリスト予想」や「IFISコンセンサス」といった項目を見てください。
もし現在の株価が、コンセンサス予想の高い数値を前提に買われている(=PERなどの指標が割高になっている)なら、その決算をまたぐのは【極めて危険なギャンブル】です。 「ハードルが上がりきった状態」で決算を迎えるのは、金メダル以外は許されないオリンピック選手のようなものです。少しでもミスをすれば(期待に届かなければ)、袋叩きに遭います。
第4章:学園長が「好決算」で大損し「暴落」で歓喜した話
この大学の学園長である私も、かつては「数字(実績)」しか見ていませんでした。 ある成長株が「前年比+50%」という素晴らしい決算を出したのを見て、「これは安い!」と翌日の寄り付きで成行買いをしました。
しかしそこが天井でした。株価はそこから半年間、下がり続けました。 後で知ったのですが、その株は決算前にすでに2倍に暴騰しており、市場は「+50%」程度では満足せず、「+80%」くらいを期待していたのです。私は、終わったパーティ会場に遅れて到着し、高い入場料を払わされ退場されられただけでした。
逆に今は、好決算なのに「材料出尽くし」で暴落している優良株を見つけると、歓喜します。
「業績は完璧なのに、需給(心理)だけで売られている。これはバーゲンセールだ」
私は、みんなが投げ捨てたその株を、安値で拾いにいく心の準備をします。
なぜなら、テクニカル(需給)の嵐が過ぎ去れば、株価は再びファンダメンタルズ(業績)という重力に従って、適正価格まで戻っていくことを知っているからです。
材料出尽くし感の売りは、本当に頻繁に起こるので覚えておきましょう。
まとめ:あなたは“期待値の調整役”たれ
決算発表とは、企業の「通知表」ではありません。 市場の膨らみすぎた「期待(バブル)」を、現実の「実績」に合わせて調整する、ガス抜きのイベントです。
良い数字が出たから買うのではない。 期待に対して、数字がどうだったか。そして、その反応が行き過ぎていないか。
今日からあなたは、数字に一喜一憂する素人ではありません。 市場の期待と現実のギャップを見抜き、その歪みを利益に変える、賢明なる期待値の調整役なのです。
