「たくさんのテクニカル指標を試したのに、なぜかいつも相場の大きな流れと逆のポジションを持ってしまう」
「チャートパターン通りに売買しているはずが、『ダマシ』に遭ってばかりで損失が膨らむ…」
もしあなたが、そんな風に感じているのなら、この記事で紹介する一冊の本が、チャートの表面的な形ではなく、その背後にある「市場参加者の心理」と「巨大な資金の流れ」を読み解くための、全く新しい「羅針盤」を授けてくれるでしょう。
長年、第一線で活躍してきたファンドマネージャー・石原順氏による『チャートリーディングの黄金法則』。
この本は、無数のテクニカル指標を網羅した、複雑な分析手法の解説書ではありません。
それは、「市場とは、大衆心理と巨大な資本によって動かされる、一つの大きな『流れ』である」という思想に基づき、その流れの方向性を見極め、逆らわずにただ乗るための、極めてシンプルかつ本質的な原則を説いた、プロの実践哲学書です。
この記事では、本書で語られる核心的な教えを、客観的な視点から要約して解説します。
一般的なチャート分析が「地図読み」なら、石原式リーディングは「海流図と風向計」の解読である
本書が提唱するのは、チャートの細かい形に一喜一憂する、ミクロな視点からの脱却です。
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一般的なチャート分析:目の前の地形や道を詳細に読み解く「地図読み」。短期的なルートを見つけるのには役立つが、天候や季節といった大きな環境の変化は捉えきれない。
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石原式リーディング:地球規模の「海流図」で潮の流れを読み、「風向計」で貿易風の向きを知る技術。一度その大きな流れに乗ってしまえば、細かい航路のズレは問題にならない。
本書は、この巨大な「海流と風」、すなわち市場の長期トレンドと大衆心理を読み解き、その流れに身を任せるための、極めて大局的な航海術なのです。
「大きな流れ」に乗るための「3つの黄金法則」
では、この巨大な流れを、プロはどのように捉えるのでしょうか?本書で語られる、3つの黄金法則を見ていきましょう。
法則1:森を見よ、木を見るな(トレンドは神様である)
相場の大きな方向性を、長期の移動平均線で見極める
解説:石原式リーディングの絶対的な土台は、「トレンドフォロー」です。まず、週足や月足といった長期チャートと、100日や200日といった長期の移動平均線を使い、相場が今、上昇・下降・横ばいのどの「季節」にあるのかを判断します。この大きな流れに逆らうことは、冬に半袖で出かけるようなものだと説きます。
具体的な手法:
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長期移動平均線:200日移動平均線より株価が上にあれば「買い」だけを考え、下にあれば「売り」だけを考える。この大原則を徹底する。
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短期的な逆行は無視:長期トレンドが上向きなら、短期的な下落は絶好の「押し目買い」のチャンスと捉え、決して狼狽売りはしない。
ポイント:これは、日々の細かな値動きという「ノイズ」を捨て、最も勝ちやすい「優位性のある方向」だけに自分のエネルギーを集中させるための、最も重要な規律です。
法則2:群衆の「心理」を読め(投機筋のポジションに注目する)
チャートの外にある「見えない力」を可視化する
解説:市場を動かしているのは、チャートの形ではなく、実際に売買している「人間」です。特に、ヘッジファンドなどの巨大な資金を持つ「投機筋」が、どちらの方向にポジションを傾けているのかを知ることは、未来の風向きを読む上で極めて重要です。
具体的な手法:
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投機筋のポジション動向:IMM通貨先物などのデータから、プロの投機家たちが「買い」と「売り」のどちらに大きく賭けているのかを確認する。
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ポジションの偏り:市場参加者のポジションが「買い(あるいは売り)」に極端に偏った時、それは相場が反転する強力なサインとなり得る。
ポイント:これは、自分一人で未来を予測するのではなく、市場で最も力を持つプレイヤーたちの「手の内」をカンニングするようなものです。チャート分析に、この視点を加えることで、分析の精度は劇的に向上します。
法則3:武器を絞り、シンプルに戦え
使う道具は、長年プロが使い続けてきた王道だけでいい
解説:多くの初心者は、勝てない理由をツールのせいにし、次から次へと新しい指標に手を出します。しかし、本当に重要なのは、ツールの数ではなく、その本質的な使い方を習熟することです。
具体的な手法:
ポイント:本書が推奨するのは、これらの普遍的でシンプルなツールだけです。多くの情報を詰め込むのではなく、むしろ余計な情報を削ぎ落とし、本質的な情報だけで判断することこそが、プロの思考法だと説きます。
【最重要】注意点:これは「短期的な予測」の技術ではない
本書が教えるアプローチは、明日の株価をピンポイントで当てるためのものではありません。
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忍耐力が不可欠:大きなトレンドが発生するまで、時には数ヶ月単位で「待つ」ことが求められます。常にポジションを持っていないと落ち着かない「ポジポジ病」の人には向きません。
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スイング〜長期投資向け:日々の値動きを追うデイトレードではなく、数週間から数年単位の、大きな波を捉えるための考え方です。
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マクロな視点が必要:チャートだけを眺めるのではなく、金利や経済動向といった、市場の背景にある大きなテーマを理解しようとする姿勢が、この手法を使いこなす上で重要になります。
まとめ:チャートリーディングとは、市場という「生き物」の習性を知ることである
『チャートリーディングの黄金法則』が私たちに教えてくれるのは、チャートを、単なる価格の記録としてではなく、市場という巨大な「生き物」の足跡として捉える視点です。
それは、その生き物の習性(トレンド)を理解し、その群れの動き(大衆心理)を読み、決して逆らわずに、その大きな流れと共存していくための、賢明で力強い知恵なのです。本書は、そのための最も信頼できる、普遍的な原則を示してくれる一冊と言えるでしょう。

